雨の中を、ひとりきりで泣いていた
他に人は見当たらない
そこにいるのは、自分と、打ち付ける雨だけ──
俺は、たったひとりの肉親を、雨の中で失った
母が駆け落ちしたのだ
俺の事は邪魔だからと
必死に引き留める俺の手を振り切って
母は行ってしまった
打ち付ける雨の中
俺はひとりきりで泣いた、泣いた、泣き続けた
泣いたって、母は戻って来ない……
そんなこと、分かりきっていたのに
涙と、抑えきれない感情に押し寄せられ
雨の中で、ワンワンと大声を上げて泣いた
来年から中学生になる
泣いてる場合じゃないのに……
けど、止められないんだ、溢れ出してくるんだ
唯一の肉親を、母を引き留められなかった
俺自身の無力さに、心が砕けそうで──
雨の中で、自分の意識を必死で留めていた
母への愛情が、憎しみへと変わらないように……
ーひとりきりー
9/11/2025, 7:44:41 PM