小絲さなこ

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「置いて行ったりしないから」



よちよち歩きしていた頃から一緒にいたから、今さら離れるなんて思わなかった。

「泣き過ぎ!」

そう言う彼女も、今にも泣き出しそうだ。

「だ、だってさぁ……」
「もー。なんであんたが泣くわけぇ……」
「うう……情けねー、俺……」
「まぁ、今さらだけどね」
「……うう」

志望校に合格した彼女にお祝いの言葉を言おうとしたら、涙が溢れて止まらなくなってしまった。
物心つく前から一緒にいるから、今まで散々みっともない姿を晒してきたが……

「たった四年じゃないの」
「四年もだぞ!」

県外の大学への進学が決まった彼女と、県内の大学を志望する俺。
初めて離れ離れになる。

俺は将来やりたいことが定まっていない。大卒というステータスを得るためだけに大学に行こうとしている。
それに対して、彼女には夢がある。真っ直ぐにその夢を追う彼女に対して、置いていかれてしまうのではないかと不安なのだ。

「大丈夫、置いて行ったりしないから」

彼女の唇が頬に触れる。

「私だって、ずっと一緒にいたいんだよ」


眉を下げて微笑む彼女の頬を、一筋の涙が流れた。


────君と一緒に

1/7/2025, 8:36:35 AM