「あと、どのくらい弾けるかわからない」
嘲笑とともに吐き出す。
「あと、どれくらいきみに逢えるかわからないんだっ」
声を上げて泣いた俺に、ピアノの少女はそっと微笑んで音を弾けさせていく。
大丈夫だよ、とでも言われている気分だった。
ピアノを弾いているとき彼女はいつも不思議と隣にやってきていつの間にか一緒に弾いているのだ。
きみの奏でる音楽は繊細で透き通ってて清涼感のある夏を連想させた。
もうぜんぶぜんぶ忘れて今だけはこの時間に浸っていよう。この命が尽きるまで、きみと。
─君の奏でる音楽─ #31
8/12/2024, 11:08:00 AM