白糸馨月

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お題『友だちの思い出』

 いつも突拍子もない思いつきをする友達がいる。たとえば、小学生のくせにドローン使って教室を撮影してその時のいじめっこの悪事を明るみにしたり、
小中とバレンタインデーに屋台を作ってチョコを売り始めたり、高校の時学園祭でお化け屋敷で作為的に好き同士組ませて『吊り橋効果』でカップル成立し始めたり。
 こんなすごいことばかりする友達と距離を置いたり置かなかったりしながらやってきている。
 大学は別になって今は、社会人になってブラック企業でくすぶる日々だがある時そいつから連絡が来たんだ。
 そういえば、あいつは就職活動せずに地元でブラブラしてたなと思い出す。

「会社たちあげようと思うけど、お前も来る?」

 そんな連絡。

「なにしたいか決めてないの?」

 と返信したら、「うん」とすぐ返事が返ってくる。それから続いて返事がくる。

「ていうか今『東京駅』にいる」
「住む場所は?」
「今日は野宿しようと」

 思わずためいきをついてしまった。もしかしたら、こんな仕事以外なにもできない日々にピリオドを打てるのではないか、そんな気持ちはゼロではない。
 その話を聞きたいと思いつつ、やはり強烈な思い出を刻みつけてきた友達が、よく知ってるやつがホームレスみたいにごろごろしてるのは耐えられなかった。

「今からそっち迎えに行く、場所は?」
「駅前のこの辺かな」

 そう言って写真が送られてくる。友達が駅前のスペースでホームレスと楽しそうに缶ビールで乾杯してる写真だった。
 また思い出が一つ刻まれたところで、友達を迎えに行くべく俺は部屋を出た。

7/7/2024, 2:50:20 AM