マル

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 今日も神社にある桜の大樹は美しく咲き誇っている。
 自分にとってこの桜はとても思い入れのあるもので、自分の一生の一部といっても過言ではない。
 小、中学校とこの桜を見やりながら登校し、高校の時も何かあるに付けてはこの桜の元に行っていた。
 この桜の下にいると不思議と気分が落ち着いて、どれだけ悲しんでいようが怒っていようが、この桜に見られていると考えると気恥ずかしく感じるのだ。
 そして今頃の時期、桜の花が散りだすこの時が、この桜の一番好きな季節だった。
 絶えず薄桃色の花びらが視界を覆い、足元を染めあげる。その幻想的な景色が、忙しなくも平凡な日常を非現実的な世界へと変えてくれる。

 そして今も桜の根本に腰を下ろし、この手記を書き記しているが、絶えず落ちる桜の花びらが度々ページに落ちてきて、さも栞であるかのようにどこか誇らしげに挟まっていく。
 取り払ってしまったほうがいいのだろうが、いつかこのページをまた開いたときに桜の花が溢れるのを考えれば、このままにしておきたいと思うのだ。

 桜を見上げる。
 もう若芽が目立つようになり、緑の葉がその多くを占めている。
 僅かに残った花さえも、花びらとして解けて落ちていくのだ。
 また今年も、桜が散っていく。


きょうのおだい『桜散る』

4/17/2023, 6:35:28 PM