太陽の光を浴びて
自然界に溶け込む。
「ずっとここにいればいいのよ」
となりで彼女はひざを抱え、傾けた。
裾に縫いつけられたフリンジが流れるように、
髪束が空を透いてゆく。
「そうしたら悩みごとなんてなくなるでしょう?」
彼女の視線と、
「悩むことは嫌いじゃないんだ」
綿毛が交差し、遥か彼方へ。「生きている感じがするから」
「その生きているっていうのは、存在意義のようなもの?」
彼女が姿勢を崩して「辿り着ける場所なんて無いわ」「ここにいてくれるだけでいいの、それだけで」
フリンジがばらばらと散る。
「充分よ」
潤いの目。唇。地面に縫いつけられた手、降りてくるカーテン。
空が見えないと不安になった。
「もう行くよ」
別れを告げて
幕引きを止める。
「……手を離してくれないかな」
空には薄い雲が掛かっていた。
「あなたのことを語り継ぐわ」
「どんなふうに?」
「病弱な幼なじみを捨てて村を出た、最低で、夢見がちな英雄。彼は紫の美しい瞳をもっていたって」
思わず振り返ると、彼女は陽だまりから手を揺らし微笑んでいる。
【美しい】
1/17/2026, 7:03:06 AM