ももく

Open App

 夏の代名詞のような麦わら帽子だが、少女は雪のちらつく季節でもかぶりたがった。
 姉が、どうにかなだめすかして、毛糸のぽんぽんのついたニット帽をかぶせたものだ。
 春になって外で遊べるようになると、少女は毎日麦わら帽子をかぶって外に出た。
 なんなら、家の中でもかぶっていた。

 その日は、そんな麦わら帽子を落としたのも気づかずに遊んでいたという。
 どんなにわくわくすることがことが起きたのだろうか。
 家族は、楽しい夕食の想像をしながら、少女を食卓に呼んだ。



『麦わら帽子』

8/12/2024, 1:12:02 AM