小説の練習中

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 ダンボールが乱雑に置かれた部屋の中、僕は咳払いをした。買い物袋の中から新品のホワイトボードを取り出す。

「これから一緒に住むんだ。約束事を決めないか?」

 食後の緑茶を飲みながら一息ついていた彼女は、不思議そうに目を瞬いた。

「約束事?」
「そう。例えば、君が得意な料理を担当する代わりに僕は掃除を担当する、とか。もちろん怪我や病気、どうしても気分が乗らない時みたいな例外はあるけれどね」

 今まで違う家庭で生活してたんだ。どうしても価値観の相違はあるだろう。価値観をすり合わせることで僕たちが互いを尊重し、支え合うことができるように。僕たちのルールを決めたい、と彼女に伝えた。

「いいね。面白そう!」

 明るく笑った彼女に安堵の息をつく。束縛っぽいと嫌がられたらと懸念していたが、どうやら要らぬ心配だったようだ。

「やりにくいと感じたなら2人で相談してルールを変えよう。そうやって僕たちの生活を育んでいくんだ。とりあえず、今日はざっくりと生活リズムについて決めようか」
「わかった。それじゃあ起床時間についてなんだけど、私朝型だからだいたい四時には起きてるの!」
「ちょっと待って」

 両手で「T」の形を作った。四時だって? 最近朝のウォーキングにハマり始めた僕のじいちゃんよりも早いぞ。

「……オーケー。続けて?」
「それでね、朝早くに起きるから、寝るのも早くて」
「健康的でいいね。何時に寝るの?」
「九時前には」
「タイム!」

 再び両手で「T」を形作る。九時前に就寝。幼稚園に行っている僕の姪より寝るのが早いとは。恐れ入った。
 どうやら僕らの同居生活は前途多難になりそうだった。

テーマ「ルール」
同居初日のカップルの話

4/25/2026, 5:02:06 AM