放課後の静かな教室。窓から差し込む夕日の光が、少しだけ赤く染まった机を照らしていた。彼女は、少し緊張した様子で机の端に立ち、指先を弄りながら言葉を探している。僕もまた、心臓が高鳴るのを感じていた。
「…あのさ、好きです」
その一言に、教室の静寂が深まる。僕は彼女の瞳を見つめるが、その視線はすぐに逸れてしまった。沈黙が二人の間に流れる。返事を待つ時間が、永遠のように感じられる。
「ごめんね、今は…」
彼女の言葉は柔らかかったが、はっきりとしていた。胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚に襲われたが、不思議と嫌な気持ちは湧いてこなかった。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう、言えてよかった。」
僕は微笑みながら答えた。彼女もまた、少し安心したように微笑んだ。上手くいかなくたって、これでいい。これが僕たちの現実で、今の僕にはそれがすべてだった。
そして、二人はそのまま夕日の中を並んで歩き出した。言葉は少なくとも、心の中には確かなものが残っていた。
8/9/2024, 12:56:29 PM