がやがやと賑やかな話し声が聞こえてくる居酒屋の中に俺はいた。
個室と呼べるほどの空間に、男女合わせて10人が座ってる。
「ねぇねぇ、二次会行かないー?」
「お、いいね。」
「あたし、カラオケがいいー!」
楽しそうにそんな会話がされてる中、俺は一人、おずおずと手をあげた。
「俺はここで…。明日も仕事あるから…。」
今の時間は夜11時。
朝が早い仕事をしてる俺は、これ以上遅くなると起きれなくなりそうだった。
(ちょっと今回の合コンは派手な子が多くて苦手だし…。)
金色の髪色をしてる人はもちろん、赤や青なんかの髪色の人もいる。
『クリエイター関係』の専門学生らしいけど、苦手なタイプだった。
「あ、そうなんだー。」
「とりあえず1回出る?」
「お会計だけしちゃおっかー。」
明らかに棒読みな感じの言葉に、俺は軽くため息をついた。
この場は一旦お開きという形になったようで、全員で店の外に出る。
「じゃーな。」
「今日はありがとねー。」
「さっ!カラオケ行く人、寄っといでー!」
パパっと挨拶を済ませて歩き始めた俺以外のメンバーたち。
最初から相手にされていないことに気がついてはいたものの、ほんの少しだけ寂しい気もした。
(せめてあの女の子…茶髪で大人しかった子と話すればよかった…。)
5人いた女の子のうち、俺と真反対の位置に大人しく座ってた女の子がいたのだ。
大人しめの髪色に、話を振られた時にだけ受け答えしていたのを俺はずっと見ていた。
会話が弾むとしたら、あの女の子だと思ったのだ。
(まぁ、今となってはどうしようもないけど。)
そんなことを思いながらカラオケに行くメンバー達を見送ったとき、ふと俺の隣に誰かがいるような気配がした。
目線をやると、そこにあの茶髪の女の子がいたのだ。
「!?!?」
あまりにも驚いて声がでなかった俺。
彼女はカラオケに行くメンバー達に視線を送ったあと、俺をじっと見つめた。
「二人ぼっち……だね?」
「ーーーーっ!」
そう言ってにこっと優しげに笑った彼女。
この瞬間に恋に落ちたことは、言うまでもない。
3/21/2024, 1:30:04 PM