『ユートピア』は昼の世界。光が当たる希望の街。
それに比べてボクが毎日報告に行かなきゃいけない『ユートピア管理施設』の周辺は夜の世界。星も灯らぬ真っ暗な世界。そこに少ない街灯が施設までの道を照らしている。
『ユートピア』の広場から真っ直ぐ歩くとあるそこは、何故かボクたち「権力者」じゃないと見えないらしく、たまに近くに演奏者くんがいることもあって、ちょっぴり怖い。
報告書を渡して、新しい用紙を貰う。ただそれだけ。あとは他の相手と話したり、いろいろできるけどもボクはあんまりこの空間自体が好きじゃない。
だいたいボクは落ちこぼれみたいなものなんだ。
過去の記憶に干渉することもできず、都合のいい操り人形にしかできない。しかも命令しないと生きるための最低条件しかせず、全然使い物にもならない。まぁ、後半は偉い人が言ってたことだけど。
そんなのはダメなんだって。
だからボクは落ちこぼれなんだ。
もしかしたらいつか、なんて思ったこともあったけど、全然ダメだった。
いつか、いつか、ボクは用済みになっていらなくなるかも。
それでも、これからも、ずっと彼のピアノを聴いていたい。
ボクは施設から去りながらそう思った。
4/8/2024, 4:08:01 PM