その人を見た瞬間、身体の内側から沸き起こった感情の渦に巻き込まれ、過去生が鮮明な記憶となって脳内に降り注いだ。
心はすでに囚われていた。
かつて鬼殺隊として毎夜鬼を狩っていたころから。
なぜ忘れてしまえたのだろう、なぜ思い出さなかったんだろう。あんなにも大切で、大好きで、心底愛していたのに。
「ごめん、オレ…アンタのこと…」
「いいんだ。何も言わなくていい」
そもそも覚えていなかったせいで最愛のアンタを探せなかったことを謝ろうと思ったが、熱い抱擁に遮られた。
相変わらずアンタの腕の中はあったかくて、優しくて、安心する。溢れる想いはもう止められない。
めちゃくちゃに泣いたオレは最強の男の胸元を盛大に濡らし、オレよりもっと泣きもろいこの人はオレの頭上で滝行してるみたいだった。
2/5/2024, 1:50:16 PM