日の出
「日の出がみたいから車出して♡」
目の前のブルーライトに眠さが勝ってきた深夜2時。年越し特有の外の喧騒も幾分マシになってきたその時間帯に届いた1通のLINEに目を奪われる。
なに、いまから?なんて聞かなくても今からなんだろう。取ってつけたような♡だけでは庇いきれない酷い内容。人をなんだと思っているんだ。しかし、彼女の声で再生されると不思議とかわいらしいおねだりのように聞こえて困る。都合良く使われていることなんてわかっている。一昔前の言葉で言えば、自分はアッシーやらなんやらに分類されるんだろう。そんなに広い車でもないし、運転技術に自信があるわけでもないし勝手に運転手にされては困ってしまう。そもそも専用の運転手だとしても、こんな時間にLINE一つで来いって…しかも日の出ってことは結構朝方までじゃん…とかぶつぶつ言いつつも一番暖かいダウンジャケットを着ている自分に最早笑えてくる。
「今日は仕方ないから行ってあげるけどいつも行ってあげるとは限らないからね」と釘を刺しつつ、「30分後ぐらいにそっち着く」と伝えるとすぐに既読がついてOKというかわいらしいキャラのスタンプが送られてきた。洗っておいた彼女専用の暖かいブランケットを棚から出して、靴を履いて外に出た。思っていたよりも冷たい空気が顔中に付き纏う。身震いしながら車に入ってエンジンをつけ、暖房が効き出すのを待たずに発進する。本当なら今頃布団の中なんだけどな。あぁ、もう。本当にわがままだなぁ。そう思いつつも、小悪魔な彼女が、絶対に自分の好意を受け取らない彼女が、誰かのもとに行ってしまわないように今日も迎えに行く。アッシーでもメッシーでもなんとでも言えばいい。今日の日の出を彼女と見れるならそれだけでも幸せだから。彼女が好きなあのバンドの曲をかけた車は、そろそろ眠りにつき始める夜の町を安全運転で走る。
1/4/2026, 10:58:08 AM