『春恋』
やけに明るい光が射し込んで、私はぱちっと目を覚ます。どうやらカーテンが閉まりきっていなかったらしい。おかげで部屋も暖かい。なんだか腹が立って、カーテンをぴしゃりと閉める。アラームが鳴るまで10分は寝られたというのに、最悪の朝だ。
「ん゙〜〜〜」
もう、仕方ない。起きるしかない。諦めて、もう一度カーテンを開けた。窓の向こうでは桜の花びらが舞っている。綺麗だった。そういえばもう、春か。
ふと、連絡が来ていないかスマホを見た。
「え゙っっ」
友人と電話が繋がっていたのだ。思い出した、昨日の夜に雑談をしようと電話が来て、数時間の雑談をした挙句、そのまま寝落ちしたんだ。最悪だと思った。さっきの間抜けな声も、全部聞かれていた。……いや…まだ寝てるかもしれない。きっと大丈夫だ。電話の向こうでかすかに動くような音が聞こえた。
『かわいいね』
「……は?」
それからは、寝息だけが聞こえてきた。
眩しい光を見ながら、春が来たのだと改めて思った。
窓の向こうでは、少し強い風が吹いたようで、花吹雪が見えた。
4/16/2025, 9:08:40 AM