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お題「見つめられると」
※二次創作


僕はずっと、あの深い紫色の目が苦手だった。
どこまでも真っ直ぐなあの目に見つめられると、自分の全てを見透かされるようで。
勝手な劣等感を抱いていることも、こんなどろどろした感情も、全て。

だから僕は、月に逃げた。
これ以上、苦しさに纏わり付かれるのは嫌だったから。
これ以上、嫌いになりたくなかったから。
月に行けば何か変わるかも、なんて、淡い期待を抱いて。

でも実際は、何十、何百年経っても何も変わらなかった。
アメジストやアレキのようにやりたいことを見つけられる訳でもなく、かといってゴーシェのように自由に振る舞える訳でもない。
ただ、漫然と日々をくらしていた。

そんな、数百年後のある日、フォスが帰ってきた。
そこにかつての面影はなく、身体中ボロボロで、うわ言のように呪詛を呟いている。
フォスが帰ってきたらかけようと思っていた言葉も、全て消えてしまった。
だって、あれは、本当にフォスなのか、なんて。
聞けるはずなんてない。

ぐるぐると回り続ける思考に、僕を置いて進む話。
どうやら、フォスの3度目の計画には、僕も付き合わなくてはならないらしい。
しかも、全ての宝石を粉にするという。

2度目の宇宙船から、懐かしい僕らの故郷を見つめる。
いまから、壊すのだ。
僕の、僕らの手によって。

地上に降り立つと、まずはダイヤがボルツと対峙した。
あの二人の間には、誰にも入れないような蟠りがあるのは知っていたけれど、改めて目の当たりにすると、かつてのあの日々は幻だったのでは無いかとすら思えてしまう。

ふと、視界端に揺れる、赤色。

(うそ、まさか、ハズレだと思ってたのに!!)

一目散にみんなへ駆け寄って行くアレキを、少し出遅れて追う。

そこで見たのは、まさに地獄と形容するに相応しいものだった。
アレキの手によって崩れていく、地上の楽園。
校舎に響く、みんなの悲鳴。
みんなみんないなくなった後、最後に立ち塞がったのは、僕が逃げてしまった、かつての相棒だった。
久しぶりに見た顔は、記憶と少しも違わない。
いつも通りの、何を考えているのか分からない顔。

(どうして、いま、そんな顔ができるんだ?)

あぁ、やっぱり。
だから僕は、君の目が苦手だったんだ。

3/28/2024, 9:06:42 PM