『明日に向かって歩く、でも』
目が覚めると、見慣れた天井が目に入った。
部屋は暗く、ベッドの横のテーブルに置かれたランプだけが細々とした光を放っている。詳しい時間は分からないけど、かなり長い時間眠っていたようだった。
起き上がって周りを見るけど、先生も、ジュネさんもそこにはいなかった。
まただ――
僕は溜め息をついた。また、修行中に倒れてしまったようだった。
このアンドロメダ島に来て半年、未だに夜普通に眠るより、修行の途中に気を失ってしまうことの方が多かった。
このままじゃ駄目だ――
そうは思うものの、体はなかなかこの島の極端な気候に慣れてくれない。日中は五十度を超える気温に体力と水分を奪われ続け、一転夜は氷点下まで下がった空気が疲れた体に更に鞭を打つ。熱を出して寝込んだ回数はもう忘れてしまった。
それに、体を動かすのは嫌いではないけど元々そこまで体力があったわけじゃない僕は、まず修行についていけるだけの体力をつける必要もあった。その体力をつけるための基礎的な運動ですら、僕にはついていくのがやっとだった。
僕に修行をつけてくれるダイダロス先生は厳しいけど、僕のことを想ってくれている。一緒に修行を受けているジュネさんは、自分も疲れているはずなのに僕の世話を焼いてくれている。僕だけが、二人に迷惑をかけている――
その事実を噛み締めて、僕は俯いた。
辛い修行に耐えて、聖衣を手に入れて日本に帰り、兄さんともう一度会う――そんな強い決意と共にこの島に来たはずだったけど、心が折れそうになったのは何度目か分からない。
兄さんが僕の代わりに送られたデスクイーン島は、ここよりももっと過酷な環境だと聞いた。そんな地でも兄さんはきっと頑張っている。僕も頑張らないといけない。泣いている暇なんてない。そう思うけど、現実は厳しく、辛く、耐え難かった。
目的を果たすため、僕は前に進み続けるしかない。それは分かっている。でも、本当に僕は生きて日本に帰ることができるんだろうか。
たまらない不安に襲われて、僕はベッドに横になって寝具を頭から被った。
決して泣くまいと思っていたけど、溢れ出る涙を止めることができず、僕は手の甲で涙を拭った。
1/21/2025, 12:05:30 AM