「大好き!」
「ありがとうございます」
「肉まん、半分こしよ!」
「ありがとうございます。いただきます」
「てーつないで帰りたい!」
「はい」
俺の恋人は、感情を表に出さない。
いや、出してるけど見えづらいが、正しいか。
嫌なことは嫌だってはっきり言うけど、あいつの口から「好き」とか言われたことあるっけ。
俺が「大好き」って伝えると目を逸らす。綺麗に閉じられた薄い唇が綻んで、はにかみながら返事をする。気づいているかな、耳元が赤く染まること。
「好きです」
「え?」
俺の袖を握りながら、震えた声で話す。
「大好きです」
海のように深い青色の瞳から、涙が溢れている。
いつもの帰り道。学校近くのコンビニに行き、買い食いをして家まで帰る、はずだった。
「な、泣かないで、どうしたの?」
とめどなく溢れる涙を拭うために、頬を指で撫でる。しゃくりをあげて泣く君の顔は涙と鼻水で濡れていた。
「4月から…会えなくなるから。好きって…言える時はたくさんあったのに…」
「好きです…大好きです」
涙を流しながらもその瞳は真っ直ぐに俺を見つめている。
俺の恋人は、感情を表に出さない。
否、俺の恋人は分かりやすい。
泣いたり、笑ったり、怒ったり、驚いたり。子供のように表情が変わる。そんな表情を見ることが一番の楽しみだ。
そして俺の恋人は、どうやら俺のことが大好きみたいだ。
「俺も大好き!」
4/22/2025, 1:49:39 PM