『つまらないことでも』
目が覚めた。私の意識は自然と窓に向いた。硝子の向こうには雲ひとつ無い青空があった。私は少しだけ口角が上がった。何故か、まだ学校にも向かっていないのに、私は放課後のことばかりを考えていた。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
チャイムの音で私はハッとした。いつの間にか学校が終わっていた。教室を出た私はいつもの道を少し早く歩いていた。
いつもは、英単語を詰め込むための道でしかないこの道。ただ歩いているだけなのに、歩く音は軽快なリズムに。車がすぎていく音は、それにスパイスを加えていた。こんなにも帰り道が充実しているのは人生の中でも初めてかもしれない。いつもはつまらないことでも、今日は足どりが軽かった。
気づくと、ピアノの音が聞こえてくる。私は音に案内されるように、あの場所へ向かった。
[こんにちは、、]
「いらっしゃーい。あ、この前の。」
そう言って迎えてくれた朝日さんは、ピアノと向き合うように座っていた。
「今日、めちゃくちゃ天気いいね。快晴って感じする。」
[そうですね。あ、覚えててくれてたんですね。]
[この前言い忘れてたんですけど、、誠です。名前。]
「へぇー。かっけー。あぁ、やだった…かな。」
[いいんです。今までも、言われてきたんで。]
[朝日の方がよっぽどいい名前だと思います。とても似合っています。]
「そんなこと言ったら、君もだよ。」
[え。]
そう言って顔を上げると、朝日さんと目が合った。目を丸くした朝日さんはまっすぐそう言った。
名前を褒められただけなのに。ただそれだけ。
朝日さんといる時間が、私にはこの時間が輝いて見えた。
《朝からの使者》EP.2 青空と輝き
8/5/2024, 12:44:37 PM