『大空』
窓辺から見えた半分の月がやけに明るくて隣の家のかわら屋根やうちの車のボンネットや弟の三輪車なんかがつやつやと光っている。電信柱から月影が伸びていたから散歩にでも行きたくなってしまうけれど、お母さんに怒られてしまうしきっと外は寒いだろうから考えるだけにする。
月に透かされたたなびく雲の辺りを飛べたらどんなに楽しいだろう。明るく光る星のひとつやふたつをつまみ食いしたらどんな味がするだろう。こうもりはここのところの寒さで冬眠を始めてしまったから、この夜空はおそらくわたしとフクロウだけのものだ。けれどサンタクロースが来たら道を譲ってあげなければ。ひと晩で世界中のこどもたちにプレゼントを配るのだからそれぐらいは当然のことだ。もしかしたらもしかすると、手伝ってと言われたりするかもしれない。もしそうなったら、空飛ぶそりやトナカイの光る鼻の写真をSNSに上げたらバズったりするだろうか。お手伝いのご褒美にプレゼントをもう一つもらえたりしないだろうか。
「まだ起きてるの?早く寝なさい」
12/22/2023, 3:48:24 AM