夜に懸ける

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「もー、馬鹿は風邪引かないんじゃないの〜?」
「…すまん」
「あ、馬鹿は風邪引かないんじゃなくて、風邪を引いたことに気づけないのか〜そっか〜」
「……ちょっと辛辣じゃない?」

ここ最近何となく怠さが抜けずに、それでも気のせいだと思っては過ごしてきた1週間弱。ついに昨日熱を出してしまってからは自力で動くことができず、とりあえず誰か助けを…と気づいたら彼に電話をかけていた。動けないから薬と食べるものを買ってきてほしいと素直に頼んだはずだったのだが。なぜかここぞとばかりに煽られた。なぜ…
そうは言っても風邪を引いてしまった俺に非があるので、あまり言い返せない。普段は穏やかながらも、気の知れたやつには鋭い言動を放ってくるコイツの事はそれなりによく理解しているつもりだが、さすがに熱で弱っている同僚ないし仲間に対してこれは結構な心的ダメージである。
これ以上何も言い返して来ない俺を、やはり本調子でないと思ったのか、若干気まずそうな声が返ってきた。

「まぁ、最近なんか調子悪そうだったもんな〜。でも僕が思うに、それは自分の不摂生が祟った結果だから!これを機に反省して。ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、ちゃんと風邪治すんだよ?」
お前は俺の母親か。心の中でそう突っ込みつつ、いやしかし心当たりがありすぎるので、ぐぅの音も出ない。
昼夜逆転生活は当たり前、睡眠は3時間取れればいい方、食事は栄養が取れれば何でもいいかと対して気にしてこなかった。そのツケが今になって返ってきたということで。
「…反省してる。これから気をつける」
自業自得とはまさにこの事だな。決まりが悪すぎてボソボソと聴こえるか聴こえないか微妙な返事になってしまったが、相手にはバッチリ聴こえたようで、「そうしてくださ〜い」と笑いの混じった声が返ってきた。
その後の「まぁ、反省できないから馬鹿とも言う〜」の言葉は聴かなかったことにした。

12/16/2023, 1:37:59 PM