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【声が枯れるまで】

自分の喉から漏れるのは、ヒューヒューという音だけで。今更、もう、言いたいことなんてない。言い尽くしてしまった。

お前が、電話をかけたあの日、バタバタと、パジャマのまま飛び出した俺は、そのまま水溜りを飛び越えて、アスファルトを蹴って、無我夢中で、お前を探したんだ。
新月の夜で、ザーザーと雨が降っていて、この時期に走るのは絶対寒かったはずなのに、何も気づかないくらい、夢中になってお前を探したんだぜ。

なんであの時、俺に電話をかけたんだ。「さよなら」なんてお前が飛び込む直前に聞くくらいなら、知りたくもなかった。

探し始めて、一時間。救急車とパトカーが川辺に停まっているのを見た俺は、本当に、呼吸が止まった。

馬鹿野郎。

そして、三日経った今。目の前のたくさんの管に繋がれて延命させられているお前は、ようやく今日の朝になって目を覚ましたらしいじゃないか。

「…おがえり。」

「…何その声。」

今は、なんで死なせてくれなかったの、とか、もう会いたくなかったなんて、言葉を聞きたくなくて、側に寄ると、無我夢中に抱きしめた。

お前もごめん、なんて言いながら泣くものだから、二人して声をあげて泣いた。
俺の声はガラガラで、お前の声は頼りない。
でも、生きててよかったって、それだけは伝えたくて、泣きながらだけど、言っておこうって思って。

「いぎででよがっだ。」

大笑いしたお前のことは一生許さない。

10/22/2024, 4:17:52 AM