コーラガムを口に入れた。
くにゃん、くにゃんとした感触がする。
安っぽいまがいもののコーラの甘さが口内を支配する。
絶対にコーラじゃないけど、コーラとしか言いようがないあの味だ。
電車は混んでいた。
二人組や三人組や五人組やらがわらわらと密集して、各々が各々で、時間を潰していた。
異常な盛り上がりを見せ、顔を見合わせて、笑い転げる三人組。
付かず離れずでぴったり身を寄せ合って、穏やかに話し込む二人組。
はしゃぐ声を弾ませて、慌てて、シーッと目を合わせる五人組。
そわそわと落ち着きがなく、どことなくぎこちなさが漂う五人組。
ツンケンとした奴らの顔色を忙しなく伺いながら、焦ったように会話を繋ぐ、仲介がいる三人組。
やたら一方だけが言葉を捲し立てている二人組。
いろいろな友達が、車内には溢れている。
僕はガムを噛みながら、それをじっと観察していた。
電車は混んでいた。
しかし、この電車の中には、友達しかいないみたいだった。
みんな誰かの友達で、友達として話に興じていた。
この電車は、平日の昼間の電車だからそうなのだ。
平日の昼間なんて、暇を持て余している主婦の一行か、残り時間をのんびりと暮らす権利を手に入れた老人の一行。
あとは、昼までの講義を済ませて遊びにいく大学生。
そんな、彼ら彼女らは、だいたい友達のグループで乗ってくる。
しかし、今日は人数が多かった。
タネは簡単だ。
今は定期テストの時期だった。
この電車の走る線路上に高校の最寄駅がある。
テストを終えた高校生の友達集団。
日中の余暇時間に、出かける主婦の友達集団。
趣味で遊びにいさんで出かける老人の友達集団。
昼過ぎの電車は友達がたくさんいる。
まるでコーラみたいだ。
昼過ぎの電車は友達がたくさんいる。
10/25/2024, 1:59:50 PM