静かな情熱
あ、コイツ、また僕の上に名前がある。
なんて、廊下に張り出された、成績表の順位を見て。僕はなんとなく、モヤモヤとした感情に支配される。
成績表が張り出されて、僕の名前を見つければ、自然と目に入る、彼の名前に。
隣のクラスのヤツだな。
どんなヤツなんだろう?
僕は自慢する程でもないけど、頭は良い方で。
そんな僕より、一つ上の成績の彼は、当然、僕よりも頭が良いワケだ。
やっぱり、真面目そうなヤツなのかな?
で、クラスでは中の下ぐらいの友達とつるんでる感じ、とか?
てか、これで、陽キャの、クラスで上位のヤツらと仲良くしてるようなヤツだったら、なんかムカつく。
……だって、僕が冴えない陰キャだから。
だからって、別に友達が居ないとかではないんだけど。
そんな風なことを考えて、成績表を見つめていたら。ふいに、今僕の頭を支配している、彼の名前がどこかから呼ばれるから。
僕が慌てて、その声の方へと振り向けば。
爽やかな香水の香りが鼻をくすぐって。
その香りに導かれる様に、視線を送ると。
その彼が、呼ばれた声に返事をしているから。
……コイツが、僕の一つ上の成績のヤツなのか。
なんて。
僕は軽く衝撃を受けた。
だって、ヤツは香水なんてつけて、髪も染めてて、どう考えたって、陰キャじゃない!
めちゃくちゃ、陽キャじゃん!
……なんか、めっちゃ負けた気分。
いや、成績ではもう負けてるんだけど。
がっくりと、肩を落とす僕。
そんな僕に、ふとある考えが浮かんだ。
次のテストでは、絶対、ヤツに勝ってやる。
きっと、陽キャのヤツは、僕なんて眼中にないんだろうけど。
でも、このまま負けっぱなしなのは、僕の気が済まないから。
もし、次のテストで、彼の名前の上に、僕の名前があったなら。
陽キャの彼は、少しでも、僕の存在を認識してくれるのかな。
そんな、淡い期待の様な気持ちには、気が付いてないフリをして。
僕は、ただただ、静かに闘志を燃やすのだった。
End
4/18/2025, 6:52:25 AM