『狹い部屋』
この狹い部屋には沢山の思い出があった。
楽しい事も、辛い事も。
親元を離れて、上京した私は、小説家の夢を追いかける
日々を過ごしていた。
何度落選しても、諦めない。
書いては消して、書いては消す。
たった四畳半で紡がれていったストーリーは
私の人生において素晴らしい宝物になったに違いない。
人生の1ページが、文章だとしたら、
今書いている小説の半分にも満たないよ。
人生は長いのだから、時には筆を休める事も大切だ。
部屋のドアの前に立った私は、一歩を踏み出す。
「人生という名の小説は、まだ始まったばかりだ」
そう自分にいい聞かせた。
今、その扉を開けて。
6/5/2023, 2:49:01 AM