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秋恋

秋に恋しく思うものは薪の燃えるにおい

暮れなずむ空の下
家々で火を使い始める気配がする
友達と別れたとたん小走りになる
まずいっ薪のにおいがあちこちでする
1日の終わりが急げ急げと背中を押してくる
今日は風呂炊きの当番だった早く帰んなきゃ
生活の営みが容赦なく待ち構えている

裏戸からこっそり入り何食わぬ顔で風呂焚きを始めた 母の姿はない裏の畑へ野菜をとりに行っているのか

隣のかまどではご飯が吹き始めたようだ
オレンジ色の火が映し出す
いつもの台所

甘い匂いがたってきた
始めチョロチョロ中パッパ…
おばあちゃんの呪文が甦る

不便で贅沢とは無縁だった幼かった頃
人の手が作り出す同じ光景には安心感と
妙な心地良さがあった頃
安全基地は確認するまでもなく日常にあった

10/10/2025, 11:20:59 AM