『部屋の片隅で』
部屋の隅に半分透けたような人影が見えた気がして目を凝らすと、確かになにかがそこにいた。おまえはなんだと尋ねるとそれは死神だと言った。私に引導を渡しに来たのだという。死神とあろうものがそんな部屋の隅っこからなにができるのかとひとしきり笑った次の日、死神は部屋の隅から離れたところに現れた。その距離わずか一歩ほど。気の長い話だとまた笑って、これは無害なものだと位置づけたのがずいぶんと前のこと。
そういえばあれはどうなったのかと部屋を見回してみる。半分透けたような人影が見えた気がして目を凝らすと、それは数を増やして私を四方から取り囲んでいた。眼の前にいたそれに肩を掴まれてようやく理解する。なるほど確かに死神だったと。
12/8/2023, 3:02:51 AM