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コロナ禍になる前の話だが、
大型台風が関東に上陸するというニュースを見て、
私は気が気でなかったことがある。

何故ならば、推しのイベントが台風に直撃する可能性があったからだ。

手に入れたチケットを片手に、SNSで情報収集をしていると、運営のアカウントがイベント開催を発信していた。

大型台風は、夜から明け方のうちに関東を抜けるという予報だ。運営側は予報に賭けたのだろう。
予報通りであるならば、イベント当日は台風一過となり交通機関もそこまでマヒしていないはずだ。
しかし、もし台風が長引けば、会場までの足が無いためイベント参加を断念しなくてはいけない。

参加できない場合は、チケットのお金は払い戻しをすると運営側は発信している。

払い戻しの対応をしていただけるのは、とても有り難いことだ。とても誠実な対応だと思う。
しかし、イベントに参加したい気持ちの溜飲を下げるには少々足りないのである。
欲しいのは、お金ではない。
推しと同じ空間に居られること、推しを生で見られること、普段では決してありえない──特別な喜びが欲しいのだ。

台風よ去れ!或いは、温帯低気圧に変わってしまえ!

私はチケットを握りしめ、スマホに映る台風の予想進路図にありったけの念を飛ばした。

私の念がきいたのだろうか。
或いは、あの台風が来るという時、他にも大型イベントが重なっていたので、そこに参加する人たちの想いが空に通じたのか──翌日、台風は姿を消していた。

私はチケットを大切に鞄に入れると、水没ギリギリの橋をいくつも越え、イベント会場に向かった。

会いたいと思う気持ちは、嵐をも消し去り
会いたい人に会える喜びは、嵐をも越える力となる。

ヲタクというのは、なかなかパワフルな存在だ。

まだ参加はしたことがない──というか、チケットが即SOLD OUTになってしまって参加できたことがないアーティストのライブは雨が多いという。

SNSを見る限り、雨を乗り越えるのもファンの中では慣例となっているようだ。

私もいつかソレを体験してみたいものだが、チケット戦争に勝てるかどうか。

嵐を乗り越えることより困難なのは、チケット戦争かもしれない。←

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嵐が来ようとも

7/29/2024, 2:57:20 PM