コイツは目が見えない。だから俺が居ないと駄目なんだ。そう思っていた。なのに真っ暗闇の中、火かき棒で探りながらもしっかりとした足取りで俺の手を引くコイツはさながらヒーローだった。
あの日暗がりから突如手を伸ばして来た人攫いも、使えないと放り出した方の孤児が、閉じ込めた小屋の鍵をフォーク一本で開けるとは思っていなかったろうし、真夜中に月明かりも無しに逃げられるとは思っていなかっただろう。
ようやく出て来た月に照らされたコイツの瞳は、相変わらず焦点が合わなかった。けれど、ここにいるよと煌めいて光っているように見えた。
テーマ 暗がりの中で
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弱くて守らなければと思っていた人物が局所的に強みを発揮するシーンが好きです。
全く本編とは関係ないですが、暗がりに鬼を繋ぐが如くって慣用表現、格好良いですね。いつか使いたい!
10/29/2024, 9:59:45 AM