しぎい

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父親以前に一人の男だった。
改めてそう思い知らされたのは、刑務所内から送られてきた言い訳じみた謝罪の手紙のせいだった。

恐らく何かの点数稼ぎに必死なのだろう男が机に向かい合う姿が思い浮かぶ。だだそれだけだ。

私は便箋を飾り気がない封筒に戻し、それを昔に男が贈ってくれたシュレッダーにかける。

男からの手紙はその日を境に頻繁に来るようになった。もちろんその時からシュレッダーはフル稼働だったし、返事を書くこともない。

手紙が来てはいちいち中身を確認して、そしてシュレッダーにかける、という一連の流れがそろそろ身に沁みた頃。

直接の暴力ではなくても、相手に覆しようのないダメージを負わせることはできる。

言葉もなく涙が流れてきたそのときも、私は手紙を確認して、それからシュレッダーにかけていた。

5/6/2025, 9:31:02 AM