『狭い部屋』
それは人間1人が、腰を下ろすスペースがあるだけの、正しく小部屋だった。
私はソソクサとその部屋に入り、鍵を閉める。
こういう部屋に長居する人もいるけど、私はサッサとおいとまするタイプだ。
用は足した。さて、行くか。
私は手近のペーパーホルダーに手を伸ばす。
でも、私の手は空を切った。
ホルダーに取り残された芯が、カラカラと虚しく回転している。
しまった。
でも諦めるのはまだ早い。
買い置きのペーパーは?
私は体を捻り、後ろのタンクの上を確認する。
でも、タンクの上は、薄く埃が積もっているだけだった。
バカな。詰みだと。
私は歯を食いしばって羞恥心を堪える。
そして、天を仰いで声を絞り出した。
「誰か、紙持ってきてくださいっっ!」
6/5/2023, 5:47:43 AM