彗星

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題:紅茶ができるまで

 サラサラ……。
 砂時計の砂が落ちる音がする。紅茶を作っているためだ。
 アプリコットの豊かな香りがほのかに香ってくる。
 砂時計の砂は半分ほど。あと1分半といったところか。
(ピーチさん、紅茶は初めて作るって言ってたけど、淹れ方上手いなぁ)
 ピーチさんはシェフがいるから料理は自分でやらないから、紅茶も淹れたことが無いみたい。
 ……私の好みも分かってるし。
 ……残り1分。
 鼻唄唄い始めた。何の唄だろう?
 ……残り30秒。
 相変わらず砂時計は砂を落とし続ける。
(それにしてもまあ、ずいぶんと楽しそうに淹れるなあ……)
 紅茶淹れるぐらいではそんなに楽しめないと思うんだけど……。これが、価値観の違いなのかな。
 それとも、人に紅茶を淹れたことがないからかな。
 ……また今度、淹れてもらおうかな。ピーチさんが良いなら。
「出来たわよー!」
「はーい」
 砂時計は砂を落としきっており、もうサラサラという音は聞こえない。
 紅茶を一口啜る。
「どう?」
「んー……GOOD」
「やった!」
 アプリコット本来の爽やかな酸味とほのかな甘みが絶妙にマッチしていてとても美味しい。桃に似た甘酸っぱさ。
 美味しいので、もう一口頂く。
「……また今度、淹れてくださいませんか?」
「……いいの?」
「……」
 私は紅茶を啜りながら頷く。
 ピーチさんの顔が、パッと明るくなった。
 この決断は、紅茶ができるまでに決めたこと。
 砂時計の音を聞いたら、なんだか紅茶を飲みたくなってしまったんですもの。

お題『砂時計の音』

10/18/2025, 5:27:30 AM