『君の声がする』
私の名を呼ぶ貴女の声が好きでした。
優しく穏やかで、春に咲く花のように可愛らしい声でした。
貴女のはしゃいだ声も、怒って拗ねた声も、しょんぼりと落ち込んだ声も、その全てが好きでした。
何より好きだったのは私の名前を愛おしそうに、満開の桜のようにふんわりと微笑んで呼ぶ声でした。
貴女と別れてずいぶんと長い月日が経ちました。
貴女が別れ際に私の名前を呼んだときの、あの切なげに震える声が今でも耳に残っています。
それが貴女が私の名前を呼んだ最後の日でした。
貴女と別れて10年が経った今日。あの日以降初めて貴女の声がしました。
それは私の名前を呼ぶ声でした。
出会った頃の、幸せだった頃の、永遠を信じていたあの頃と同じ春のような声でした。
待たせてごめんなさい。
私が方向音痴だから、貴女への道を示してくれたんですね。ありがとう。
今、逢いにいきます。
2025/02/15
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2/15/2025, 1:07:32 PM