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遠く、空を行くひこうき雲ひとつ。
ジャングルジムから見上げた、二人の視界は同じだった。
夕暮れ、銭湯、暮れなずむ町々の明かり。
迫ってくる茜空は、カレーの匂いを振りまいて。
ぴーぷー。
豆腐屋のラッパの音は、まだ僕らが郷愁を感じるには若すぎて。
ただ、その音に無性に家に帰りたくなるのを我慢しながら、僕たちは駄菓子のおでんを食べた。
何を隠そう僕は、彼女の幼なじみであり、淡い期待を抱いていた。
彼女は、僕の事をどう思っているのだろうか。
恋、と名付けるにはまだ若すぎる僕たちの恋。
物心もついてない頃。
ただ、彼女の冠をつけたら似合いそうな頭が好きだった。
それを撫でていく大人たちに混じって、僕はその頭を触りたかった。
僕の成長と共にそれは、清潔感のないものになってしまった。
僕の手、汚れっちまったかなしみに。
それが、大人であると同時に、彼女との接点のなくなっていく過程であると、また僕は知っていた。

9/23/2023, 11:34:11 AM