彼の隣へ腰かけて癖のある髪へ手を伸ばし、そのまま撫でる。前髪の跳ねを抑えようと何度も撫ですいてみるも、手が離れた途端に元通り。ピョコンと元気が良い。
「?」
彼は突然のことに疑問符を浮かべていた。他の男性よりも大きい瞳は真ん丸になって成人男性にもかかわらず、幼くあどけなさを残している。猫っ毛を堪能するべくしばらく撫で続けた。驚いていた彼も心地よくなってきたのか体を私の方へ傾ける。知らず知らずのうちに彼の頭を膝上に招待していた。気付いたのは彼の頭の重みで、無意識だった。
「いらっしゃい。撫で方嫌じゃなかった?」
「気持ちいいよ。急にどうしたの?」
「『たまには』うんと甘やかさないとって思って。」
前髪をかきあげて現れた額にキスを1つ。ちゅ、なんてやけにかわいい音だった。
「甘えて良いならこのまま眠っても?」
真ん丸になっていた目がとろんと夢見心地に伏せられて、彼の声も眠気を含んだものへ変化している。
「うん、いいよ。好きなだけ眠って?」
「じゃあ、あとおやすみのキスを頂戴?」
午後の日差しが微睡むにはうってつけで、私もうとうとしながらおやすみのキスを贈ると彼の腕が伸びて体勢が戻せない。くつくつと喉で笑った彼と合わせた唇はしばらくそのままだった。
3/5/2023, 10:23:21 PM