「夜明け前」
「なんで起きてるの?まだ夜だよ?」
「タバコ」
ベランダでタバコの煙に巻かれながら彼はそういう。
「ベランダで吸ってほしいって言ったの守ってくれてたんだ」
「約束は守る」
「そう?そのわりには、まだプロポーズはされてないけど?」
いつかのときに口に出した。そろそろ結婚しよう。毎回有耶無耶になって終わってしまう。
どうせ、夜が明けたら彼は忘れてしまうのだろう。ならば、これくらいイジワルしても許されるはずだ。
「忘れてた」
彼は、タバコの火を消した。
「夜が明けたらプロポーズしてやるから待ってろ」
そういうと、彼はベットに潜り込み、寝息をたてはじめた。
「はぁ、惚れ直しちゃうな」
夜明け前がこんなに美しく思えたのは、いつぶりだろうか。
9/13/2023, 2:04:30 PM