22時17分

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追い風に乗って、夜の海で船旅をしていた。
舳先にランタンでも付けているかのように、一隻の小さな小舟は漂っている。周辺は明るい気でいる。

見上げれば、三日月が。
小舟の正体は、三日月でもある。

漕ぐ。
くたびれた木製のオールで、濡れた夜の一部を削る。
海の奥深さに比べたら何百年分の一瞬なのに、想像通りに重く、そして動かない。
費用対効果。めっちゃ低くて叶わない。それで「老人と海」のように、強敵に出逢ったら死角でこの舟は大破。漂流することになるだろう。
危険を想像したら危険が囁いてくる。
体力を使うな。

違うと首を振った。
それでも漕ぐ、漕ぐ……漕ぐしかないんだ。
月は優雅だが、一方地上は向かい風に転じている。

遠くに島影が見える。
島か本土か分かるのは、夜が明けたら。

1/8/2025, 9:31:37 AM