寝ている彼の顔に手をかざして予想した通りの反応に心を落ち着かせた。
…よかった生きてる。
生暖かい微かな吐息が私の手にぶつかって霧散していく。彼は腕と頭に包帯を幾重にも巻かれベッドに横たわっていた。
「うっ…」
傷が痛むのか眉をひそめても起きる気配はなく、眠り続けて。私は椅子に座って彼の身の回りのことをして、ここ数日起きるのを待っている。
彼が怪我をすることなんて仕事柄しょっちゅうだった。骨折した時は「腕、しばらく使えないから君に食べさせてもらおうかな」と軽口を言う元気もあったのに。
今回の怪我はあまりにも酷く意識が戻ってこない。時折何か探すように動かす手を痛くないように握り返すのが唯一の出来ること。
『誰もがみんな』生きているから
彼は人より死との距離が近いから
知らぬ間に失ってしまうのがとても怖くて、医者が「もう大丈夫ですよ」と言ってくれても離れられないでいる。
2/11/2023, 9:06:22 AM