私は今、多数の大人たちに見張られながらこの遺書を書いている。
仕様がないとはいえ、待っている最中の大人たちの周りには静寂が生まれていて、少し怖い。
死に怖気付く事無く この遺書を書き終え、躊躇いもなく殺されるつもりだったけれど、この静寂に包まれた部屋だとなんだか、今までの思い出が走馬灯のように溢れかえってくるな。
財産やこの家系の行く末は少しあとに書き留めるとして、私の人生を少しでも誰かに見てもらいたいと思って先に思い出を書かせて頂こうか。
そうだな、1番の思い出は、大花(ひろか)が生まれたことだろうか。
不妊に悩んでいた私たちの間にようやくやって来てくれたのが、大花だった。
産まれた時は、仕事もほっぽり出して会いに行ったし、イベントは全て出席した。
そんな大花が思春期、反抗期に差し掛かった時は凄く嬉しかった。
家系柄、大した犯行はさせなかったけれどね。
ボディガードもつけて遊園地も、1回だけだが行ったのを覚えている。
あまり、普通の家の楽しみを教えてやれなくてごめんな、大花。
と、まぁ。
未だに大人達が怖いので、無駄話はここまでにしておこうか。
私は今、散々やり合っていた加藤との決闘の末、命を代償にうちの家には手を出さない約束を取り付けてもらった。
俺が急に居なくなると厳しいかもしれんが、そこは我慢してくれ。
財産、跡継ぎは全て私の娘である大花に任せることとする。
これに意義がある者は、話し合いで解決して頂きたい。
武術においても、知能においても、大花は俺の数倍先を行く能力を持っているので、叶わないと思うが。
これからの幸運と発展を祈っている。
#静寂に包まれた部屋
9/29/2023, 8:02:58 PM