『私の当たり前』
「この林檎、何色に見えます?」
「赤です」
「本当に?」
「では、こちらのバナナは?」
「黄色です」
「林檎は赤い、バナナは黄色い、ですか?」
「では、林檎はどんな赤色をしていますか?」
「どんなって……」
「赤にもいろいろあるでしょう?」
「バナナはどんな黄色ですか?」
「……黄色は、黄色です」
「まさか、あなたの網膜に映し出された色と、私の網膜に映し出された色が、寸分違わず同じだなんて思っていませんよね?
瞳孔の開き具合、明度や彩度を感知する細胞や器官、それを認知する脳、これら全てがあなたと私では異なっています」
「質問を変えましょう。この林檎はどんな形をしていますか?」
「えと、その、丸くて」
「丸い? どんなふうに?」
「見たままの形です」
「あなたが見ているものを、私はわかりませんし、私に見えているものをあなたはわからないでしょう」
「最後に、これまでの私の言葉をどう受け取りましたか?
キツイ口調に感じましたか?
呆れたようでしたか?
諭すようでしたか?
あなたの見えているものや感じていることを当たり前のこととして、普段生活していませんか?」
7/9/2024, 4:17:56 PM