カミハテ

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あいまいな空と、イラつきがちなまこと



「ねえ、まことー、洗濯物取り込んで畳んでくれない?」

「、、、」

「ねえ、聞いてんの?返事は?」

「はいはい後でするよー」

「後でじゃダメ、だっても」

まことは母の声を耳からシャットアウトした。

最近母にイラつくことが増えた。

まことは高一なのでちょうど反抗期の時期だが、
自分では反抗期じゃないと思っている。

なぜなら、まことの思う反抗期とは、理由もなく親にイラつき、当たり散らかす時期のことだからだ。

それに対して、最近まことが母にイラついたことといえば、飼い犬のしつけの仕方について、まことの意見をだるそうに聞かれたことだった。

正当なルートを辿ってと言えば変な感じだが、
真っ当にイラつくことをされてイラつくのはごくごく普通のことである。

頻繁に親にイラつくからと言って、必ずしも原因が子供の反抗期にあるわけではない。

さらにもっと言えば、原因が子供にあるとも限らない。

原因は、親にあるかもしれないのだ。

反抗期になるぐらいの年齢の子供をもつ親は、一般的に40,50代だろう。

そのぐらいの年代になると、アドバイスしてくれる先輩のような存在が減っていく。

だから、自分の欠点に気づく機会が減り、結果、欠点を直すことが難しくなるのだろう。

そして、まさに今、まことの母がそうだ。

自分の意見とは異なる意見を耳を傾けようとしない、聞くとしてもあからさまに嫌そうに聞く。

その欠点を指摘しようにも指摘したところでその話を聞こうとしないのだから一生改善されない。

負のループである。

年を重ねるとどんなに優しい人間でもだんだん頑固になるらしい。

まことの母も徐々に頑固になってきている気がする。

人の話を聞かない今でさえまことは困っているのに、
これからさらに頑固になられると、、、
想像しただけでうんざりしてゲボをしてしまいそうだ。

まあ、母という生き物は、血がつながっているだけの他人である。

たとえ親だとしても、なんか馬が合わないことはよくあることだ。

そこは割り切っていくしかないだろう。

なぜここまで相性が悪いのか、それは、、、

まことが深く考えを巡らせようとした時、、、

「ことっ!まことっっ!!」

「えぇ?」

「えぇ?じゃないでしょ、むかつくわー。さっきからなんかっい呼んでも返事しないし。そもそもさ、まことは」

「で、何言いにきたの?用があるんでしょ?」

母が小言をまくしたてる気配を素早く嗅ぎ取り、まことは母の口を遮って問う。

「ちゃんと最後まで話聞いてよ。はぁー。」

そうは言っても母の小言を聞いていたらキリがない。

非効率的なのだ。

「、、、」

母は、黙って要件を待っているまことを横目で見つつ、どこか呆れた表情で言った。

「もうすぐ雨が降りそうなの!早く洗濯物して!」

「あぁ、、そうなんだ」

「はぁー。さっきも言おうとしたのにあんた、聞かなかったじゃん。ほんと、人の話聞かないんだから。」

それはこっちのセリフである。

母が話をするときは、良い話だろうが悪い話だろうが話が長いのだ。

だから、せっかく良い知らせでも、途中で聞く気が失せてしまう。

長い付き合いなので、そこらへんは対策済みである。

良い知らせのような雰囲気を感じたら、話の最初だけ集中して聞き、まことに関係ありそうなら続けて聞く。

なさそうならシャットアウトという方法だ。

なので、さっき雨が降りそうだと言っていたとしても、まことはまだ洗濯物をしたくないので、まことに不利益な情報として処理されたのだった。

まあでも、この場合は母は悪くない。

「ごめん、聞いてなかった。今からするわ」

まことはすっと立ち上がり、ベランダへ足を出す。

母はなぜか真顔で洗濯物を取り込むまことを目で追う。

あまりにも目線が執拗なので、まことは我慢ならず、尋ねた。

「さっきからなに?」

「ん?うーんとね、まことってやっぱよくわかんない子だなあって思って」

「はぁ。あっそ。てゆーか、外晴れてきてんだけど。雨降らんじゃんか」

まことが不満そうに訴えると、母はやっとまことから目線をはずし、外へ向けた。

「あー、ほんとだ。ま、いーじゃん。私のおかげで早く洗濯物取り組めて。」

「、、、」

はぁ。こいつ調子良いな。

よくもまあこんなに都合良く解釈できる。

ま、母とは生涯付き合っていかなければならないのだ。

いちいち反応してては疲れるだけである。

反応もそこそこに、まことは洗濯物を畳み出した。

ふと、窓の外を見上げる。

はぁ?結局曇りなんですけど。

晴れるか雨かはっきりしろよ。

白黒はっきりしろよもー。

まことは空ごときに対して腹が立っている自分に気づき、また自分にもイラついたのだった。

6/14/2024, 4:09:56 PM