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ああ、また透明になった。

わたしという存在は透明になることが多い。
今だってそうだ。
さっきまでわたしと話してくれていた同僚の鈴木さんは会話に加わってきた田崎さんと楽しげに喋っている。側から見ればわたしもお喋りの一員に見えるだろう。けれども実際は、まるでわたしの存在が透明になったかのように、彼女たちの視線はひとかけらもわたしに注がれない。透明になったわたしの言葉なんてきっと届いてないだろうけれど、わたしは置いていかれまいと必死に相槌を打つ。
「わかる〜」
「そうだよね」
「それある」
「たしかに〜」
声まで透明になってしまったのかというほど何の反応も示さない彼女たちを前に、わたしは心の中で大きなため息をついた。

5/21/2024, 11:43:24 AM