とある恋人たちの日常。

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一二九、声が聞こえる
 
 盛大に怪我をしてしまい病院で診てもらうことになった。
 私の恋人は病院で仕事をしている救急隊員。
 
 今日は病院待機かな?
 彼の姿を見ることができるかな?
 
 私は彼が仕事をしている姿がとても好き。
 いつも見せてくれる柔らかい雰囲気を飛ばして見せてくれる格好いい彼。このギャップがまた私の心をつかむの。
 
 病院に着くと、診察室まで誘導されるけれど、この間には彼を見つけることは無かった。
 
 名前を呼ばれる直前、とても聞き慣れた声が聞こえる。その方を目線だけ向けると待機中の彼の姿がそこにあった。
 仲間と話している屈託のない笑顔は、家で見る緩んだ表情とは全然違う。
 
 私の知らない彼だ。
 
 彼を見ることができたのが嬉しくて、口元が緩んでしまった。
 
 その後の治療は別の先生がしてくれて、付き添いの友人の車に乗り込むと、スマホが震える。スマホを確認すると、彼からメッセージが入っていた。
 
『怪我した? 大丈夫? 仕事終わりに迎えに行こうか?』
 
 少し離れていたから声をかけずに戻ってきたのだけど、私の姿もしっかり見られていたみたい。
 真っ先に怪我の心配や、帰り道を心配してくれる彼は本当に優しい人。
 
『ありがとうございます。怪我は大丈夫ですよ。帰りはお願いしたいかもです。あ、仕事中の姿、格好良かったです!』
 
 素直にそうやって返すと、直ぐに返事が来た。
 
『照れちゃうから、言わないで!』
 
 どんな表情で返事を打ったのだろうと、想像すると笑ってしまい、私はまた返事を送った。
 
『仕事中の姿、本当に格好良かったです!』
 
 
 
おわり
 
 
 
一二九、声が聞こえる

9/22/2024, 12:36:59 PM