「随分前に、『狭い部屋』と『静寂に包まれた部屋』っつーお題なら出てた」
部屋シリーズもこれで3回目。
「部屋三部作」でも計画しておれば、かつ過去投稿分に容易にアクセス可能であったなら、
「狭い部屋」で導入部を、「静寂に包まれた部屋」で展開部を書き、今回の「部屋の片隅で」により幕引きができたものを。
「……何書いたっけ」
某所在住物書きは頭を抱えた。「部屋」のネタのストックは存在せず、このアプリは過去作にスワイプ地獄でしか辿り着けない。
「文章にタグ埋め込んで『過去作ジャンプ実装』、ぜってー俺の他にも欲しいと思ってるヤツいる……」
それとアンケート機能と広告削除オプション。
物書きは天井を見上げ、部屋の片隅でため息を吐く。
――――――
昔々のおはなしです。まだ年号が平成だった頃、約10年ほど前のおはなしです。
都内某所、某小さな安アパートに、花と山野草いっぱいの自然豊かな雪国から、心優しい田舎者が越してきました。
名前を附子山といいます。
数年後、2023年現在から見て8年前、諸事情あって、未婚ながら改姓して、藤森になります。
詳しいことは過去作7月22日あたり投稿分参照ですが、ぶっちゃけ辿るのがバチクソ面倒。
細かいことは気にせず、おはなしを進めましょう。
「ぱいか?」
さて。当時まだまだお金が無くて、節約に節約と節約を計4枚くらい重ねて、日常1週間をコツコツ周回しておった附子山です。
「豚バラ軟骨煮込み用?」
食材の買い出しに近所のスーパーマーケットを訪ねたところ、見慣れぬお肉の半額が、ひとつ、残っておりました。
豚バラ軟骨だそうです。別名をパイカといいます。
消費期限、明日の昼だそうです。
すごく安いのに、そこの嫁様もあの夫様も、誰も一度も手に取らない、視線に入れない。
何故でしょう。 骨が固いからです。
「軟骨」など社交辞令。「煮込み用」こそ事実。
こやつは圧力鍋や炭酸水、重曹等の手助けが無ければ、普通鍋で5時間程度煮込まないと、固くて固くて骨が食えぬのです。
上京したばかりの自炊初心者な附子山、その社交辞令が分からなかった。
「なんだろう?随分、大きい」
そうです。4日前のお題、12月4日投稿分、己の未来の後輩が豚バラ軟骨の固さを知らず買ってきた、アレのいわゆる過去エピソードです。
「鶏軟骨みたいなものかな」
鶏軟骨の唐揚げイメージで、附子山パイカをお買い上げ。半額豚バラ軟骨を、200グラム入り1パック、買い物カゴに入れまして、
「良い物を手に入れた」なんて、何も知らぬまま、ちょっぴり笑顔などして。
部屋の片隅で試しに1個、小さな塊を煮込んでようやく、パイカの「パイカ」に気がついた。
「か……ッ!」
軟骨が、固いのです。鶏軟骨の比じゃないのです。
煮込めど煮込めど20分、30分、
1時間煮込み続けても崩れない。
附子山、ようやく理解しました。
長時間煮込まなければいけない強敵だから、皆半額でも手に取らなかったのだ。
「これが、『豚バラ軟骨』……」
どうしよう。この固い固い骨っコが、まだ約160グラムあるのです。
「どうする、どうすればいい……?」
骨の周囲の肉は美味いが、この骨っコはどうしよう。
自炊初心者の附子山、固い固い白を見つめて、部屋の片隅で口をパックリ。開いた口が塞がらない。
ただ途方に暮れるばかりです。
最寄りの肉屋に駆け込んで、コレコレ困ったと事情を話し、「パイカはじっくり煮込んで5時間」と攻略法を、サクサクほっこり焼きたてコロッケ2個購入で聞き出しまして、
附子山がその日晩ごはん用に買ったパイカは、翌日の昼食になりましたとさ。
おしまい、おしまい。
12/8/2023, 4:23:20 AM