【夢】
「ごめん、もう、無理かも」
そう言った背中が消えていく。手をどれだけ伸ばしても届かない場所へ。
ああ、どこで間違ったんだろう。
意識が柔らかに浮上する。
嫌な夢だった。
冷たい汗を拭って体を起こすと、隣にはさっきの背中がたしかにそこにある。
顔を覗きこんで頬をつつくと長いまつ毛が揺れて栗色の瞳が覗いた。
「なに、」
「かわいかったから」
「何時?」
「もう10時だよ」
猫のように体を伸ばすと、お腹空いちゃった、と笑う。
目尻に寄ったしわが愛おしい。
この幸せを失いたくない。失えない。繋いだこの手を離さないように、ふたりで歩いていこう。
12/4/2024, 1:15:38 PM