とある恋人たちの日常。

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 彼女が作ってくれた朝ごはんをしっかりいただいて、ソファに座った。もちろん彼女を腕に抱きしめながら。
 
「あの……」
「なに?」
「私……この状態でいいんですか?」
 
 ソファに座った俺の上に、彼女を抱きあきげて、腰に腕を回して逃がさないようにしていた。
 
「うん」
「重く……ないですか?」
「全然。あ、離す気はないよ?」
 
 食い気味で彼女にそう告げると、少し困った顔をしながらも俺の肩に頭を乗せてくれた。諦めて俺に体重を預けてくれたのは嬉しい。
 
 昨日、心身共に疲れ切っていたようで、彼女を充電しないとダメなくらい疲労していた。彼女の温もり、香りが心地いい。
 彼女は体重を心配していたけれど、そんなに心配するほど重たいわけじゃない。実際、彼女は平均的な体重だと思うんだよな。
 
 彼女を抱きしめていると、彼女の手が俺の頭に置かれて撫でてくれる。
 
「いつも、お疲れ様です」
「ん……」
 
 彼女の手が心地よくて、瞳をとじて意識を手放したくなる。やっぱり彼女と一緒にいるこういう時間が安心するんだ……。
 
 穏やかな気持ちで眠気に襲われて、少し身を任せてしまった。
 
 しばらく時間が経っただろうか。
 かくんっと浮遊感に襲われて目が覚めた。
 
「ごめん、寝てた?」
「あ、はい。でも、ほんの一瞬ですよ?」
 
 これはまずい。
 
 思った以上に彼女の体温を欲してしまう。
 俺は彼女を抱き上げて隣に座らせる。自分の身体を伸ばして上半身を動かした。
 
「どうしましたか?」
「いや、どこか行こう。今日は甘えきっちゃう」
 
 彼女はきょとんとしたけれど、すぐに柔らかい微笑みをくれた。
 
「甘えてもいいんですよ?」
「……うん、夜に甘える」
 
 俺はそう言いきって彼女に手を伸ばす。くすくすと笑いながら俺の手を取ってくれた。
 
「じゃあ、どこへ行きましょうか?」
 
 
 
おわり
 
 
 
三四二、どこへ行こう

4/23/2025, 12:58:07 PM