「死んだ人間が霊になって
生身の人間に害を及ぼす」
などという霊的な物事について
私は興味を示したことがなかった。
私、寂しくて仕方がなかったのよね。
この世の光が闇に飲み込まれてから
ドアをノックする音が聞こえ、
階段を登る足音が聞こえ、
貴方が誘っているのかもと思った。
だから、私は--
午前3時ぴったりに鏡の前で
何度も、何度も、何度も礼をした。
その間も、毎日真っ黒な塩を変えた。
でも、貴方は来ていない。
私、貴方のこと大好きだったから
全て、覚えてるのよ。
ドアをノックする音、
廊下を歩く足音、
それらの速さとか、強さとか。
--ずっと、待っているわね。
--鏡の前で。
【鏡】#20
8/18/2023, 10:47:08 AM