ふと顔を上げた時、目に入ってきたのは三日月だった。
そういえば、あんな形の武器が海外の国にあったっけ、と突拍子もないことを思う。
「まさかお前と月見酒とはなァ」
彼はニヤニヤ笑いながらお猪口を煽る。手酌しているので嫌味を言うのは辞めてやる。
「酌も愛想もない女を傍に置くなんていい趣味してるわ」
「お前がニコニコしてたら空から月が降ってくるさ」
彼がもうひとつのお猪口に酒を入れ、差し出してくる。断る理由もなかったので口をつけたら、ずいぶん辛口のものだった。思わず眉間に皺がよる。
「女に合わせた味じゃねぇからな」
「……口つける前に言いなさいよ」
彼好みの顔をしてしまったようで、上機嫌になった彼に少しイラついてしまう。なんだかんだ、彼の手のひらの上になるのが癪だった。ぐいと飲むと彼の前にお猪口をダンと音を立てて置く。
唇から少しこぼれた酒をぺろりと舐めとる。彼が一連の動きから目を離せなかったのは計算済みだ。
「月見酒なのに月を見なくていいの?」
その言葉にハッとしたのか、差し出したお猪口に酒を注いでくれた。
「敵わねぇや、お前には」
「あら、光栄ね」
満月によりも薄暗く照らす三日月。より夜の色が濃い中で、ほのかに光るそれは酒が混ざり合うのを見た。
【君と見上げる月…🌙】
9/15/2025, 3:48:10 AM