池上さゆり

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 練習したきた成果を出しきった合唱コンクール。金賞に選ばれれば、全国大会に進むことができる。その結果発表を待っていた。
 みんなで全国出場を目指して努力してきたのだから、金賞であることを祈っていた。そして、訪れたその時間。銅賞から順に発表されていく。まだ、私たちの学校名を呼ばないでください。心臓をバクバクさせながら、祈っていた。学校名が呼ばれたのは、予想していたよりも早かった。銀賞で終わった合唱コンクールは思っていたより、ショックは少なかった。
 まぁ、こんなものかとその結果を受け入れていた。そう思っていた私の横で同級生が膝を抱えて泣いていた。なんで泣いているのかがわからなくて、ついどうしたのと声を掛けてしまった。
「悔しい……全国、行きたかったのに。こんなのってないよ最悪!」
「本気で全国行けると思ってたの?」
 言ってはいけないことを言ってしまったと気づいた時には遅かった。その子は逃げるようにこの場を去っていった。
 高校三年生である私たちにとっては最後のチャンスだった。だけど、やり切ったと思っていた私はこの結果に十分満足していた。
 ホールから出て、バスに乗って学校に戻った。あの子ほど深くショックを受けている人はいなくて、賑やかな車内だった。最後に後輩が集まってきて、部長を務めた私に感謝の花束を渡してくれた。
 あぁ、後輩たちも全国に行けるなんて思ってなかったのだと気づいた。本気で部活に取り組んできたつもりだった。誰よりも部長として、最大限の努力をしてきたつもりだった。それでも、あの子が最後に吐き捨てた最悪という言葉が理解できなかった。

6/6/2023, 12:50:51 PM