「今日は自分の未来図を書いてみましょう」
小学校、中学校。
毎年冬をこした時期になると、総合の時間で未来予想図を書くように促される。
何を書こう。
小さい頃は大きな夢を胸に抱いて、目を輝かせて一生懸命に書いていた。
しかし、今はどうだろう。
少しづつ、その“未来”に近づいてきて、自分は何がしたいのか、何ができるのか、まるで泥沼にハマってしまっているかのように、分からなくなってきていた。
「自分が何に向いているのかを踏まえて」
そう言われても、何に向いているのかなど、自分では分からない。
中学に上がってからは、何も書けなくなっていた。
「子供らしいことでいいの。」
そう言ったのは、幼なじみの明香(アスカ)だった。
「無理に大人みたいな事を書かなくていいの。無理に現実味のある事を書く必要はないの。」
僕の心情を知ってか知らずか、彼女はつらつらと言の葉を紡ぐ。
「どうでもいいような…例えば、アイスを沢山食べたい、とかね。そんな日常のやりたいことでいいのよ。それを出せば、沢山お金が必要だなって分かったり、沢山時間が必要だなって分かったり。将来の自分に必要なものが見えてくるでしょ。逆算していくのよ。自分に必要なものが分かったら、それを手に入れられる仕事を探せばいい。」
自分に必要なもの_
幼い頃、僕はプロの野球選手を夢見ていた。
いつか僕もあんな風にボールを打つんだと、練習もしていないのに勝手に妄想していた。
今からでも、遅くはないのだろうか。
たとえそれを叶えられなくても、認めてもらえるだろうか。
否、彼女なら、きっと認めてくれる。
勝ち組、負け組。そんなものどうだっていい。自分がやりたい事をやりたいままに出来たら、それだけで皆勝ち組なのだから。
僕は強い光を胸に、屋上の扉のドアノブに手をかけた。
_後日
“僕たち私たちの「未来予想図」”と書かれた紙には、『プロ野球選手』と大きく示されていた。
(お題無視“未来図”)
4/15/2025, 10:22:01 PM