時雨

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明日世界が終わるなら
普通の日常を噛み締めるのも良し。
大切な人に感謝の手紙を綴ったり、歌を作詞するのも悪くない。
また、人生を振り返りながら思い出の地を巡るのも人間としての趣きがあり美しい。

ある少女はまさに今人生の最期を迎えようとしている。
部屋を見渡せば全体的に殺風景な部屋があり、大きな窓がひとつあるのみだ。だが、今日はいつも見える窓とは少し違った。それは、窓の隅に置いてある白い花瓶に入った薄紫の花が1輪あることだった。
でも、少女は皮肉なことに筋力が底を尽き無表情に見つめていた。
その花をしばらく見つめていると、花の蜜に誘われるように雀が2羽遊びに来ている。
だが、部屋は締め切っているようだが花はユラユラと揺れている様だ。
少女は管のいばらが巻きついた青白い手を棚に伸ばし白い紙に描いていく。
空の色。 青、水色、大地の色。緑、褐色
そして世界を巡る命の色。茶色、白、黒
一つ一つに命を吹き込む作業は少女の心を穏やかにしていくが、たちまち紙を埋め尽くす紅に覆い隠されてしまった。
急いで消そうとするが視界が歪み地面に叩きつけられる。更には鼓動が落ち着いてくる。
辛じて耳だけは生き残っているが時間がない。
聞こえる音は複数な足音と機械音。
そして私の名を呼ぶ両親の声。

ああ、もうすぐか、、、
私は願う。
もし明日という日を過ごせるのなら。


「ほかほかの白ごはんと湯気が立ち上る味噌汁を質素で簡易的でも幸せと感じる感性をもつ大切な人と大切な時(とき)を永遠に過ごしたい。」 と。


瞼が落ちる最期の筋力で表情を創る。
不思議と心は穏やかだ。

白い線を描く時。薄紫の花が手の甲に触れた気がした。

5/6/2026, 12:19:00 PM